北海道大学シラバス
科目名[英文名]
ミクロ経済学Ⅰ  Microeconomics I
講義題目
 
責任教員[ローマ字表記](所属)
肥前 洋一[Yoichi HIZEN](経済学研究科) 
担当教員[ローマ字表記](所属)
肥前 洋一[Yoichi HIZEN](経済学研究科) 
科目種別 経済学部専門科目  他学部履修等の可否  
開講年度   2009  開講学期 1学期  時間割番号 011149 
授業形態 講義  単位数 4  対象年次 2 
対象学科・クラス 基礎13,14組  補足事項  
 
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価格理論、市場
授業の目標
ミクロ経済学の基礎理論を修得すること。
到達目標
消費者や企業の行動、市場における価格の形成、経済政策の効果を、ミクロ経済学の理論を用いて説明できるようになること。
授業計画
 最初にミクロ経済学の概要を説明したあと、具体的な市場のイメージを抱くために、受講者のみなさんが買い手や売り手の役を演じて、財の売買の実験をおこないます。ミクロ経済学の理論は、その市場でどのような価格が実現し、どれだけの利益が生まれるかを教えてくれます。
 次に、消費者(買い手)の理論と企業(売り手)の理論を学びます。消費者は財の価格と自分の予算を見て、より大きな満足が得られるように、どの財をどれだけ買うか意思決定します。ある財に対するすべての消費者の需要量を合計すると、その財の市場需要曲線が描けます。一方、企業は財と生産要素の価格を見て、自社の生産技術のもとでその財をどれだけ生産・販売するか意思決定します。すべての企業の供給量を合計すると、その財の市場供給曲線が描けます。(ここまで中間試験)
 以上をふまえて、消費者と企業が財を取引する場である市場の理論を学びます。その財の市場需要曲線と市場供給曲線を重ね合わせて、いくらでどれだけの量の財が取引されるかを導出します。消費者と企業はそれぞれどれだけの利益(消費者余剰と生産者余剰)を得るか、それらを足し合わせた社会全体の利益(社会的余剰)はいくらになるかを計算します。消費税などの政策が社会全体の利益にどのような影響を与えるかを分析します。さらに、財の取引のために市場という仕組みを用いることの理論的根拠(厚生経済学の定理)を理解します。
 最後に、市場が一つ(独占)または少数(寡占)の企業によって支配された場合に価格や社会全体の利益がどのように影響されるかを学びます。少数の企業間のかけ引きを理解するための手法の一つとして、ゲーム理論を簡単に紹介します。
準備学習(予習・復習)等の内容と分量
<予習>講義指定図書を含めて、自分にとって読みやすいテキストをみつけて下さい。数冊のテキストを比較しながら読むとさらに効果的です。ミクロ経済学の内容は標準化されており、扱われるトピックはどのテキスト・どの授業でも大きく異なることはありませんので、授業に先行してどんどん読み進めて下さい。テキストの説明と授業での説明を比べながら理解していくとよいでしょう。いちばんいいのは、グループさらにはサークルを作って、週に1回程度のペースでテキストの輪読会を開くことです。各章の担当者を決め、担当者はレジュメを作ってきて他の参加者たちに説明します。上級生が参加して先生役を務めてくれるとなおさら効果が高いでしょう。
<復習>授業ノートを読み直して、理解が難しいトピックがあったらテキストの中からそれをみつけて、テキストではどのように説明しているかを探って下さい。インターネットでキーワードを検索するのもよい方法です。いろいろな人がいろいろな言い回しで説明していることでしょう。「このトピックについてはこの人の説明がいちばん分かりやすい」と語れるようになったら大したものです。授業でおこなった計算は、ノートを見なくても自分で計算できるように手を動かして練習して下さい。講義指定図書のテキストには別冊で解答付問題集がありますので、解いてみるとよいでしょう。「授業で言われたことが分かること」と「問題を出されたときに自分で解けること」の間には理解度の差があります。前者で満足せずに後者を目指して下さい。とりわけ中間試験と期末試験で良い結果を残すためには後者が必要です。
成績評価の基準と方法
中間試験(配点40%)と期末試験(配点60%)によって評価します。絶対評価を主としますが、受講者全体の平均点も加味されます。
テキスト・教科書
とくに用いませんが、講義指定図書を含めて、自分にとって読みやすいテキストをみつけて下さい。数冊のテキストを比較しながら読むとさらに効果的です。
講義指定図書
ミクロ経済学入門(初版) / 西村和雄 : 岩波書店, 1986, ISBN:4-00-002180-X
ミクロ経済学入門(第2版) / 西村和雄 : 岩波書店, 1995, ISBN:4-00-002193-1
ミクロ経済学(初版) / 武隈慎一 : 新世社, 1989, ISBN:4-915787-01-X
ミクロ経済学(増補版) / 武隈慎一 : 新世社, 1999, ISBN:4-88384-004-2
初版と第2版(増補版)はどちらでもかまいません。
参照ホームページ
http://www.econ.hokudai.ac.jp/~hizen/teaching/teaching.htm

備考
入門レベルのミクロ経済学のテキストを読んだことがあると望ましいです。初めて学ぶ人にもわかるように講義をおこないますが、担当教員の経験では、経済学の考え方が頭になじむまでに少し時間がかかると思います。「経済学さん」という人がいて、この人が物事をどのように考える人なのかが分かってくる、というイメージです。ひとたび分かってくると、新しく学ぶ内容が出てきても「またこういうふうに考えたいのだろう」と論理の展開を予想できるので、頭にスムーズに入ってくるようになります。基礎理論を修得するというのは、自分の頭の回し方のうえに新たな情報を追加するのではなく、その理論の頭の回し方で物事を考えられるようにトレーニングするという性質をもっていますので、根気強く勉強して下さい。複数の頭の回し方ができるようになると、一つの情報からも「自分流に考えればAだが、経済学的に考えるとBだ。どちらがもっともらしいか」と多角的に物事をとらえることができるようになります。
更新日時
2009/01/22 21:45:12