北海道大学シラバス
科目名[英文名]
環境と人間  Environment and People
講義題目
湿原の科学 
責任教員[ローマ字表記](所属)
井上 京[Takashi INOUE](大学院農学研究院) 
担当教員[ローマ字表記](所属)
井上 京[Takashi INOUE](大学院農学研究院)
橋床 泰之[Yasuyuki HASHIDOKO](大学院農学研究院)
平野 高司[Takashi HIRANO](大学院農学研究院)
大崎 満[Mitsuru OSAKI](大学院農学研究院)
山田 浩之[Hiroyuki YAMADA](大学院農学研究院)
岩熊 敏夫[Toshio IWAKUMA](農学部)
冨士田 裕子[Hiroko FUJITA](北方生物圏フィールド科学センター)
古賀 公也[ KOGA](釧路市教育委員会)
橘 治國[Harukuni TACHIBANA](北海道水文気候研究所)
原口 昭[ HARAGUCHI](北九州市立大学)
高田 雅之[Masayuki TAKADA](北海道環境科学研究センター)
岡田 操[ OKADA]((株)水工リサーチ)
新庄 久志[Hisashi SHINJOH](釧路市)
 
科目種別 全学教育科目(総合科目)  他学部履修等の可否 ---- 
開講年度   2009  開講学期 2学期  時間割番号 000771 
授業形態 講義  単位数 1  対象年次 1 
対象学科・クラス 基礎1-52組  補足事項  
 
キーワード検索
湿地、泥炭地、植物、動物、水生生物、タンチョウ、イトウ、保全と再生、水文、土壌、気象、水質、農業、土地利用、地球温暖化、熱帯泥炭
授業の目標
北海道の湿原を中心に、地球上の湿原の分布や成り立ち、多様な生態系を紹介する。湿原が有するさまざまな機能を解説し、その存在の特異さや貴重性、重要性を論ずる。湿原の保全と利用、再生や修復の取り組みなど、湿原をめぐる最近の社会動向を伝え、湿原に対する興味と関心を喚起する。湿原にまつわる多くの学術的成果を示し、学際的研究の一端を紹介する。
到達目標
・湿原という「土・水・植物集合体」について、その基本的要件について理解する。
・世界に分布する湿原の特徴や多様な生態系について知る。
・湿原が有する様々な機能の特徴と重要性、特異性を認識する。
・自然再生やラムサール条約、気候変動と地球温暖化など、湿原が関わる最近の社会的な動向を認識し理解する。
・湿原をめぐって様々な分野で行われている研究内容の大要を知り、学際的アプローチの重要性とおもしろさを知る。

授業計画
(1) 概論・湿原の成立と水循環(農・井上 京):授業ガイダンス。湿原の分類、世界の湿原のあらましを紹介する。湿原の成立には水文環境が深く関わっているが、湿原成立の過程と,その中で水循環が果たしている役割について論じる。
(2) 湿原の土壌(北九州市立大・原口 昭):湿原に特有な土壌の特徴と、湿原生態系成立のプロセスとの関連について概説し,湿地土壌をめぐる環境問題について最近の話題を提供する。
(3) 湿原生態系の物質循環とミクロコズム(農・橋床泰之):湿原では生産者である光合成生物の他に、有機物を分解するバクテリア(分解者)やそれを捕食する小型節足動物など(捕食者)が物質循環に重要な役割を果たしている。これをミクロコズム(微小宇宙)生態系に模して論じる。
(4) 泥炭地の発達と湿原の微地形((株)水工リサーチ・岡田 操):泥炭地湿原に見られる様々な地形や微地形を紹介し、泥炭地の発達と地形の関わりについて論じるとともに、泥炭地形成のモデル・シミュレーションのあらましについて解説する。
(5) 湿原環境の解析(北海道環境科学研究センター・高田雅之):湿原を知るためにはフィールド調査が欠かせないが、一方で立ち入ることが大変困難な場所でもある。このような自然空間を知る方法の一つにリモートセンシング技術がある。湿原研究に適用される様々な解析技術を紹介する。
(6) 湿原環境と水質(北海道水文気候研究所・橘 治国):湿原のタイプとその水質面の特徴を解説する。湿原植生などに大きな影響を与える水質の動態とその保全対策との関連などについて論じる。
(7) 泥炭湿原と地球環境(農・平野高司):湿原は極域から熱帯まで地球のあらゆる地域に存在する。湿原が炭素循環に果たしている機能を解説し、地球環境から見たその役割について論じる。
(8) 熱帯泥炭地(農・大崎 満):東南アジアなどの熱帯の海岸低平地には広く泥炭湿地が分布し、特異で多様な生態系が成り立っている。近年これら湿地は大きな開発圧にさらされており、地域の環境から地球環境にまで多大の影響を及ぼしている。熱帯泥炭地の役割と重要性について論じる。
(9) 湿原の水生生物(地環研・岩熊敏夫):湿原内の水域に生息するさまざまな生物種について、その生息環境との適応などについて論じる。
(10) 湿原の魚 -湿原の沼・河川に生息する魚類-(農・山田浩之):湿原の河川・湖沼に生息しているイトウをはじめとする魚類の生活史と生息場環境について紹介する。
(11) タンチョウと湿原(釧路市教育委員会阿寒国際ツルセンター・古賀公也):北海道東部に棲息するタンチョウは、湿原を代表する鳥類であり、国の特別天然記念物にも指定されている。その生態や、人間との関わりについて論じる。
(12) 北海道の湿原の特徴と変遷(北大植物園・冨士田裕子):北海道の湿原の特徴を植物生態学の面から解説するとともに、これまでの道内の湿原消失の歴史と要因について論じる。
(13) 湿原の保護・保全と復元(北大植物園・冨士田裕子):湿原の保護・保全に向けた取り組みのあらましを、学術的側面から解説する。また近年進められている湿原の再生・復元の取り組みについても、実例をまじえて紹介する。
(14) 湿原の保全に向けた社会の動向 -ラムサール条約、ワイズユース、自然再生-(釧路国際ウェットランドセンター・新庄久志):湿原生態系の保全のために、近年いろいろな取り組みが進められている。湿原を保全するための様々な枠組みとその制度、またこれらに携わっている人々や仕事について紹介する。
(15) 湿地の土地利用・まとめ(農・井上 京):湿原と人の関わり合いを、湿原の土地利用とその変遷を通じて紹介する。人間は湿原とどのような関係をこれから築いていけばよいのだろうか。

準備学習(予習・復習)等の内容と分量
授業で紹介された図書や論文の内容を復習すること。
授業で紹介された事柄に関連するニュースや新聞記事等の世の中の出来事や、テレビ番組、出版物等に関心を持ち続けてほしい。
成績評価の基準と方法
各講師が毎回講義の終了時にその日の講義内容に基づく小テストをおこなう。
成績はこれら小テスト結果を総合して評価する。
評価は相対評価を原則とし,秀および優30%,良50%,可20%程度とする。
テキスト・教科書
講義指定図書
北海道の湿原 / 辻井達一・橘ヒサ子編 : 北海道大学図書刊行会, 2002, ISBN:4832980114
湿原生態系 / 辻井達一ら : 講談社ブルーバックスB-1034, 1994, ISBN:4062570343
湿原、成長する大地 / 辻井達一 : 中公新書839, 1987, ISBN:4121008391
北海道の湿原:写真集 / 辻井達・岡田操 : 北海道大学図書刊行会, 2003, ISBN:4832980319
参照ホームページ


備考
更新日時
2009/02/04 12:53:33