北海道大学シラバス
科目名[英文名]
中国語演習  Chinese Seminar
講義題目
入門:発音徹底トレーニング 
責任教員[ローマ字表記](所属)
清水 賢一郎[Kenichiro SHIMIZU](メディア・コミュニケーション研究院) 
担当教員[ローマ字表記](所属)
清水 賢一郎[Kenichiro SHIMIZU](メディア・コミュニケーション研究院) 
科目種別 全学教育科目(外国語演習)  他学部履修等の可否 ---- 
開講年度   2009  開講学期 1学期  時間割番号 000492 
授業形態 演習  単位数 2  対象年次 1 
対象学科・クラス 基礎1-52組  補足事項  
 
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授業の目標
★注意★ この授業は「初めて」中国語を学ぶ者を受講者に想定して開講するもので,原則として2009年度入学の1年生で,必修の「外国語科目」として中国語を選択した学生のためのクラスです(不適格と判断した場合は教員側で受講を取り消すことがあります。その場合、他の授業を取り直すことはできませんのでご注意ください)。

 入門者がつまずきやすい発音に焦点をしぼり,「中国語耳」「中国語口」の基礎づくりを「徹底的に」おこなう実践型=身体訓練型の特訓コースです。
 「中国語 発音よければ 半ばよし」――発音さえうまくできるようになれば半分は成功したも同然だといわれるくらい,中国語は日本人にとって発音がネックになりやすい言語です。例えばスペイン語であれば,学習経験のない人でも,universidadを見て「ウニベルシダ」という音を想像するのは,さほど難しくないでしょう(字面も英語のuniversityと似ていて,意味も想像つきますね)。しかし中国語で「大学」はどう読むかと聞かれたら途方に暮れてしまうでしょう。答えは,だいたい「ダーシュエ」みたいな音なのですが,アルファベットと異なり,漢字は,いくら見つめても発音は見当もつかない。ところが「ベイハイダオ ダーシュエ」と言われてチンプンカンプンの日本人も,漢字を見れば「北海道大学」と意味はわかってしまう。それでつい漢字に頼る→発音がおろそかになる→通じない→漢字に頼る……まさに悪循環ですね。
 というわけで,「耳」と「口」中心のトレーニング(いわば身体改造)を徹底的に行うことで「使える中国語」の基盤をつくりあげましょう。建築の基礎打ち工程のごとく,あるいは野球やテニスの素振りのように地道な基礎動作の繰り返しがメインですが,土台がいい加減では立派な家も建ちません。遠回りのように思えて,結局これが一番の近道であり,王道なのです。
到達目標
(1)ふだんの授業や独学ではどうしても不足しがちな口頭練習と「まぎらわしい音」の言い分け(発音し分け)・聞き分け訓練を繰り返し行い,中国語の発音にドップリ浸かることを第一の目標とします。
(2)音声学や音韻学の理論をふまえたトレーニングをこなし,アタマで覚えるべきことは覚え,カラダに染みこませていくことで,ネイティブに通じる正しい発音のできる「口」と聞き分けられる「耳」をつくりあげることがこのコースの到達目標です。
 当面の到達目標は「ネイティブ指数50」。まずは中国人に自然に理解してもらえる発音を目指しましょう。とはいえ,言うは易く行うは難し。せっかく覚えたフレーズも発音がマズイばっかりに通じなくて残念な思いをする人,少なくないのです。
 もちろん心配はご無用。なにごともコツがあります。
 それに,中国語の発音は,体系がシンプルで,規則的なので(例外ほとんどなし),実は世上喧伝されるほど難しくはないのです。「発音のしくみを理解する」+「実際に発音して中国語の筋肉を鍛える」ことで理論面(アタマ)と実践面(カラダ)からの両面作戦で発音を着実にマスターしていきましょう。
 断っておきますが,アタマを使って「理解」するタスク=参考書を読みこみアタマにたたきこむ作業,それと同時に大量の単語(漢字)の発音記号(中国語教育の専門用語で「ピンイン」と言うのですが,発音記号ととここでは仮に呼んでおきます)をアタマにたたきこむ記憶の作業量もハンパではありませんし(暗記作業はやはり絶対に避けて通れません),とにかく身体トレーニングを徹底的に行います。「徹底的に」ですから筋肉痛もご覚悟ください(これは冗談ではありません)。かくしてあなたの中国語発音ネイティブ指数は間違いなく上昇するでしょう。そうして手に入れた「発音できる口/聞き分けられる耳」は,中国語世界へのパスポートとして「一生モノ」の財産になるはずです。
授業計画
 授業は「教科書」に指定した教材を主軸にしつつ、必要に応じて様々な教材(プリント類を含む)をあれこれ組み合わせ,できるだけ効果のあがる方法を模索しながらトレーニングを行います(補助教材は教室内や図書館で利用可。場合によっては貸し出しもします)。
 「口」と「耳」中心の身体訓練コースですので,授業中,声を出す活動に積極的に参加してください。というより,ほとんど声を出してばかりです(試験も発音の上達度を測定します)。しかも地味な反復作業。さらに,授業は週1回しかないので課外での自主トレは必須です。実際に声を出して読む,録音を聴いて音を聞き分けるといったタスクはもちろんですが,アタマで理解し覚えこむ(暗記)作業も不可欠になります。
 ここで中国語の発音のしくみについて簡単に解説しておきましょう。
 上で「アルファベットと異なり,漢字は,いくら見つめても発音は見当もつかない」と書きましたが,それじゃどうやって発音をマスターするのかというと,実は漢字の読み方を表すためにアルファベットを使います。いわば外国人が日本語を習うときに「か」→ka,「を」→woとローマ字を使うように,漢字にも「読み」を示すローマ字を当てるしくみが作られているのです(「ピンイン」といいます)。ところが,このローマ字表記のしくみ(ピンイン)は,中国語独特の音をアルファベットで表そうとするわけですからどうしてもムリが出るというか,これまで諸君が慣れ親しんできたローマ字読みや英単語の読み方とはズレる場合も出てきます。例えば「大学」。だいたい「ダーシュエ」みたいな音だと言いましたが,ピンインではdaxueと書きます。xue→シュエ。え?って感じでしょ? 歌曲→gequ→グァチュィ,面子→mianzi→ミエンヅ,野菜→yecai→イエツァイといった具合で,これはもう地道にピンインの読み方のルールを覚えるしかない。といっても,おなじみの挨拶「ニーハオ」は「ni hao」ですし,北海道(ベイハイダオ)→Beihaidaoのように,ほぼローマ字読みそのままでOKなものも多いですから,恐れることはありません。それに英語では櫛(くし)combは発音記号で書けば/coum/なのに,「omb」の部分が共通するtomb(墓)は/tu:m/で音が違っており,しかもどういう場合にどう読むかは丸覚えするしかない。英語はローマ字綴りと発音との対応関係が例外だらけですが,中国語はそういう例外は原則ありませんから,qu=チュィだといったん覚えてしまえば,どこに出てきてもquはチュィ、チュイはqu。至ってシンプル。簡単なものです。あとは中国語独特の音の響きをいくつか身につければいいわけです(といって,日本語でも英語でもない別の言語ですから,みなさんがこれまで出したこともないような音もそれなりにあり,慣れるまでは多少めんどうなこともあるかもしれません)。
 ところで,発音をマスターしようとする際いちばん厄介なのは,自分の発音が合っているのかどうか,どこをどう直せばよいのか,自分ではなかなか分からないことでしょう。その点,このクラスの指導体制はかなり理想的。日本人教員+中国語ネイティブのTA(Teaching Assistant)によるTeam Teachingで,同じ日本人として学習者がつまずきやすいポイントを熟知した教員に,アシスタントとして中国人留学生(北大大学院に学ぶ先輩)がつくという黄金の組み合わせでコーチに当たります。全員一斉のメニューだけでなく,個別指導も重視します。
 教室は一人1台ずつパソコンの利用できる環境(CALL教室)で,CD-ROMやオンライン教材が使えるほか,自分の発音を録音して聞くこともできます。特にこの自己チェックが極重要で,自己モニタリング(self-monitoring)を通じて,現実の自分をクールに見つめ,目指す目標に着実に近づいていきましょう。
準備学習(予習・復習)等の内容と分量
 履修者は積極的かつ主体的な準備学習(予習・復習)が求められます。
 準備学習への取り組み方全般については、学期始めに担当教員から説明しますが、基本的に、毎回授業の冒頭で前回学習内容について身についているかどうかの小テスト(リスニング、ディクテーションの類)を実施しますので、その暗記と聞き分けできるようになるまでの反復トレーニング(課外学習)がかなり必要になるでしょう。そのほか、各回の授業で求められる準備学習の具体的内容については、学期中随時教員から指示があります。また履修者が自ら主体的に計画と目標を立て、自律的に準備学習に取り組むことも強く期待されます。
 準備学習を十分に行わなければ、身につけるべき内容を消化できず、単位も修得できなくなる可能性があるので、真剣かつ計画的に取り組んでください。
成績評価の基準と方法
 演習形式の授業であるため,授業への積極的参加を重視し,授業参加度(出席率・小テスト・発音とリスニングの練習[課外自主トレを含む]への取り組み等を含む平常点)50%,達成度を測る試験(中間・期末テスト)50%を目安に評価する(詳しくは初回授業時に説明します)。
テキスト・教科書
発音の基礎から学ぶ中国語 / 相原 茂 : 朝日出版社, 2003, ISBN:4255002185
★受講者は必ず指定の教科書を購入し、自分の所有物として徹底的反復使用(書き込みなど加工もできるように)に備えること(特に自習用に付属のCDは必須)。
講義指定図書
中国語でコミュニケーション:発音・学習法編 / 池田 巧 : アルク, 2003, ISBN:4757407114
アタマで知り、カラダで覚える中国語の発音 / 日下 恒夫 : アルク, 2007, ISBN:9784757412071
★講義指定図書は購入任意ですが,非常にすばらしい内容です。強くお薦めします。
参照ホームページ


備考
★注意★
 1.この授業は原則として09年度入学の1年生で,中国語選択の学生のためのクラスです(不適格と判断した場合は教員側で受講を取り消すことがあります。その場合、他の授業を取り直すことはできませんのでご注意ください)。
 2.地味な,しかも「疲れる」コースです。テニスに喩えれば「素振り」をメインに,ストロークやボレー(フォアハンド、バックハンドともに),サーブ&レシーブといった基本動作までのクラスですから,ゲームにまではなかなか行かないでしょう。とにかくラリーを楽しみたいというヒトには向きません。
 3.発音に特化して特訓するので、文法・語彙などの面はほとんど扱いません。コース終了時点でもカタコト会話の「カタ」程度もデキるようになるかどうかという到達レベルです。受講希望者はあらかじめ指定教科書に目を通し,具体的にどんなことができるようになりそうか,学習内容のあらましを確認・了解したうえで受講してください。
更新日時
2009/01/30 15:31:12