大学におけるシラバスの意義
大学の最大の使命は学生の教育で、その内容に関して大学の独自性が問われています。教官の日々行っている研修・研究活動はこのためにあると言っても過言ではありません。これらの活動の結果として教官は、人類の基本的財産である人「知」に関して最新の研究成果を教育できるのです。もちろん、学部での個々の授業は、各学問分野の基礎的な部分に関するものが殆どです。しかし、そこでも将来学生が最先端の研究を理解するために必要となる授業プログラムが提供されています。このためには教官は、自分が授業しようとしている学問に関して、よく吟味された教育プランを前もって持っていなければなりません。その学問のこの社会における位置付けを含めて、教育プランを講義開始前に学生に示すものがシラバスです。教官は授業する相手である学生のそれまでの学習過程や学習意欲に関しての見識を持ち、近年その研究が発展している高等教育での教育法や教育手段に関して学ぶ必要があります。大学を売り手、学生が買い手と考えれば、シラバスはまさに大学の商品カタログに当たります。本学に入るとどのような教育を受けられるかを具体的に社会に示すものがシラバスです。同時にそれは学外者に本学の教育・研究の努力の方向と、その具体的な内容を理解してもらうための情報提供源でもあります。このような意味で、シラバスは大学の最重要文書です。
本学に入学した学生にとって、シラバスは選択科目を選ぶのに最も重要な判断資料なのは当然です。必修科目を履修する場合でも学生側から見れば、シラバスは単位を取得するための勉学予定を立てるのに必要な最も重要な文書です。これからの高等教育は、主専攻・副専攻等学生が在学中の学習プランを自己の責任で組み立て、卒業に際して自己の独自性を社会にアッピールする時代です。このためにも、シラバスは学生にとっては最重要文書になっています。学生諸君はシラバスを十分読みこなして、自分の責任で在学中の勉学プランを構成して欲しい。そして、その内容や教官の教授法に関して学生間や教員と議論して、直接・間接(学部の教務係や学科の学生委員へ)に意見を出して授業の改善に協力して下さることを大学は期待しています。
教育の単位である大学院の専攻や学部の学科にとっても、個々の授業内容を担当教官任せにする時代は終わりました。構成員である教官・学生全体で授業内容を議論しあう材料としてシラバスは基本文書です。そこには当該授業が、大学、研究科・学部、専攻・学科の教育理念に基づく教育目標とどのように関連しているかが体系的に明らかにされていなければなりません。言い換えると、シラバスには担当科目に関して当該教官がどのような責任を負っているかが公表されているはずで、その内容は教官の教育評価の基本となる業績の一つです。現在、既存の研究科・学部・専攻・学科単位の学生の教育システムが、学問分野の再編成、学生の現状に照らし合わせてこのままでよいか?という検討が各レベルで議論されています。学科・専攻や研究科を越えた共通授業は本学でも既に行われており、今後は学部を横断した共通授業の実施も検討されようとしています。シラバスはこの際にも重要な文書となります。
以上述べた意義を考えて、シラバスに含められるべき項目が考えられています。シラバスのインタ−ネット上での公開はその重要性から、本学では「実施」を優先して昨年度から始まったところです。システムと内容にはまだ不十分なところが多々あります。しかし、大学の基本的な構造である授業が自律的に改善されてゆくための基本文書ですので、関係者のご理解とご協力を得てその更なる充実を進めて行きたいと思います。学生諸君からの意見も含めてシラバスの基本に関わる問題は、学科・専攻、学部・研究科さらには全学の教務委員会で速やかに対応しますので、遠慮せずに学務部教務課にお寄せください。