北海道大学の全学教育について




 北海道大学に入学した皆さんは、これから最低4年または6年間、それぞれ専門の課程で学んで、学士号の取得を目指すことになります。この教育課程を学士課程と呼びますが、この課程は「教養教育」、「基礎教育」及び「専門教育」の3種類の教育からなっています。現在の本学の制度では、皆さんは入学時からどこかの学部に所属しています。この3種類の教育はそれぞれすべて皆さんの所属する学部のカリキュラムの一部で、それぞれの学部の責任において編成されています。このうち、前の2つはそれぞれの学部から当センタ−が委嘱されて実施しています。このように、主に当センタ−で実施される全学で共通性の高い教育を、本学では「全学教育」と呼んでいます。
 「基礎教育」は各学部での専門教育の基礎となるものです。法学部・経済学部の歴史・経済学・数学、理系学部の数学や理科がこれに当たります。基礎科目の履修に関しては学部毎に異なる留意点がありますので、各学部の教務委員や教務係の説明を十分理解して行ってください。

 「教養教育」の「教養」の意味は知っておけばためになるという意味での教養ではなく、それぞれの専門にとって必須の教養を意味します。すべての専門教育に必須の教養科目を本学では「コアカリキュラム」と呼んでいます。本学の卒業生であれば、専門分野に関わらず必ず身につけておかなければならない大学レベルの素養がこのカリキュラムには表現されています。その内容は、普遍性の高いものであると同時に、現代社会の問題と何らかの形で結びついていることを目指しています。また、皆さんが専門家になろうと目指している各学問分野の社会的位置付けや将来への展望を含むものが望ましいとされています。よく選ばれた題材について、教官と学生、学生同士が討論し考えることがこの教養教育の目的です。このために、少人数セミナ−や、本学の利点である恵まれた自然の中での合宿を含む種々の体験学習の企画も含まれています。総合大学である利点は、これらの討論や共通体験が所属学部を超えた先生や学生の間で行われるという点にもあります。この中で得られる学部を超えた人間関係は、将来皆さんの大きな財産となるでしょう。高校で早期に文系・理系に分離させられた皆さんに、将来必ず要請される文理融合型の視点を持っていただくことも主要な目的の一つです。このような授業ができる人は、それぞれの分野で最も優れた見識を持つ専門家だけです。その意味で本学はこの「教養教育」を「最良の専門家による最良の非専門家教育」と呼んでいます。

 また、この教養教育のシラバスに含まれるレベルの外国語と情報処理の能力は、これからの大学卒業生に要求される最低の条件です。これらの能力の向上は、授業のみでなく学生諸君の日常的に不断の自習にも拠っています。これらの能力の向上に上限はありません。本学にはこのための自習設備が備わっています。

 全学教育で専門の基礎をしっかり学ぶと共に、「教養」を身につけ、自分自身の日本語と外国語でのコミュニケーション能力を高めてください。その上で恵まれた環境で勉学する機会を与えられた皆さんの社会での役割を自覚し、専門教育に意欲と動機を持って進まれることを期待します。